▼第8試合シングルマッチ30分1本勝負
○矢郷良明(VKF)(14分7秒 ツームストン・パイルドライバー→体固め)ジョシュ・オブライエン(東京花鳥風月)●
これを書いている現在、矢郷選手がGMを務めているプロレス団体VKFは、新木場などで定期的に興行を打っており、花鳥風月所属選手も招かれてファイトする関係にあります。
矢郷選手は空手も修得されており、ジョシュ選手のパワーファイトに蹴り技で対抗する構図となりますが、徐々に体格差で圧倒していき、得意とするパイルドライバーで決着となりました。
▼セミファイナル タッグマッチ30分1本勝負
○山本裕次郎(鎌倉花鳥風月)&梅沢菊次郎(プロレスリング・アライブ)(15分15秒 レフェリーストップ)宮本裕向(666)&●塚本拓海
メインに負けない豪華なカード!
四人それぞれが、譲れないプライドを持つプロレスラーであり、引いて間を外すテクニックを使う塚本選手にしても、大日本のリングで激闘を経てきた自負心を身に着けています。
パワーファイトとレスリングテクニックを身上とする宮本選手と梅沢選手がぶつかり合えば、バチバチとサブミッションのバトラーツファイターである山本選手が蹴りを放ち、これを受けた塚本選手が強烈な投げ技で切り返していく!
フィニッシュは山本選手の鮮やかな複合関節技でした。いつか山本選手と宮本選手のシングルを見てみたいなーと。
▼メインイベント シングルマッチ30分1本勝負
●勝村周一朗(鎌倉花鳥風月)(6分59秒 ダブルアームスープレックス→エビ固め)○鈴木秀樹
メインの大一番。鈴木秀樹選手はWRESTLE-1のベルトを引っ提げ、人間風車ビル・ロビンソンのテーマに乗って登場。
入場曲って大事、と思わされますね。かっこいい曲です。しかも弟子であるプロレスラーが師匠のテーマを引き継いで、現在もなお使っているというのは、正論暴君キャラという装飾の中に秘めた、鈴木秀樹というプロレスラーの本質の一端ではないかな、なんて。
勝村選手も自身のテーマ曲で入場。ついに両雄激突!
契約体重、階級差など、厳密な制限のあるMMA等では実現しないだろう、プロレスのリングならではの軽量級と重量級の対決。
勝村選手は、しかしそれを言いわけにしてたまるかとばかり、自身の武器である、蹴りやグラウンドテクニックで鈴木秀樹という要塞に挑んでいきました。
一方の鈴木選手は、これまでどおり、クラシカルな王道のプロレスで迎え撃ちます。いわゆる見慣れた技の数々――捕まえ、体重をかけて潰し、隙あらば投げる。シンプルだけど、そこに強みがあり、隠れた技術の機微がある。鈴木選手は決して器用なレスラーではありませんが、勝村選手がプロレスラーに求める「強さ」に関してだけは、今更言うまでもないくらいのレベルに達しています。観客の誰もが、好き嫌いはともかくとして「あ、この人は強い」と理解してしまう迫力があるのです。
そういう、望んだ相手だからこそ、勝村選手も対策を練って勝ちに行きました。寝かせてからの関節技にトライし、更には投げ技をくらいそうになる直前、これまで幾多の強豪を仕留めてきた勝村選手必殺のニンジャチョークを繰り出し、決着か!? と会場を熱くさせました。
残念ながら不発に終わり、逆襲のバックブリーカー、そして鈴木選手の代名詞であるダブルアームスープレックスをくらってしまい、惜しくもスリーカウント。
短いながらも濃いファイトで、これに満足したのか鈴木選手も恒例の、対戦相手の欠点を責めていくいつもの口撃はしませんでした。
もっとも直後のロビン選手との絡みに関しては、素で驚いていたように見えましたが。
――ダブルアームスープレックス。
私はプロレスの技には格があり、使い手によって輝きの色合いを異にしていると思っています。あるレスラーにしてみれば単なるつなぎの技でしかないそれが、別なレスラーにとっては絶対のフィニッシュホールドとして、観客を酔わせ、対戦相手をマットに沈める。まさしく鈴木選手が「育てた」ダブルアームスープレックスは美しく、必殺の域に磨き上げられた芸術品でした。
……ちょっと、ロビンさんが心配です。
三周年記念興行。花鳥風月エースがまさかの敗戦という幕切れでしたが、いつもとは異なるきれいな会場、激しいファイトに満足のいく内容でした。
シアタープロレス花鳥風月の、更なる飛躍に期待しています。