東京都北区王子を中心に活動するプロレス団体、「シアタープロレス花鳥風月」の今年最初の興行。なんと昼夜にわたり同会場で実施。
昼は勝村周一朗選手率いる、鎌倉花鳥風月主催で、格闘技寄りルールのお披露目なんかがあったりした。プロレスラーという職業は、新日本プロレスやそれに準じる大手に所属する選手以外は、個人事業主という印象が強い。しかし勝村選手は経歴ゆえか、はたまた人としての在り方ゆえか、背負っているモノが普通の選手よりもだいぶ重そうで、それが色濃く反映された内容になっていたように思う。
格闘ファイトに出場した選手は四名。計二試合。どの選手も腕に自信ありといった感じだったが、特に第二試合に出ていた篠宮敏久選手が漂わせていた雰囲気は良かった。柔術系の、まさに技巧派といった試合運びで、対戦相手のHAMATANI選手を思うさま翻弄していた。やはり問題はルールか。線引きは難しい。ちなみに第一試合に出場された太田俊平選手はヤンキースの田中選手に顔立ちが似ていた。同じく第一試合に出た松本崇寿選手は正式に鎌倉花鳥風月所属となり、次回から参戦されるとか。
実験的要素の強かった格闘ファイトの後は通常のプロレスとなり、ジョシュ・オブライエン選手と政宗選手の試合。パワーファイトのジョシュと、レベルの高いインディ系プロレスワークを誇る政宗選手激突は、一瞬の返し技からのフォールで政宗選手が勝利! と、ここで照明が落ちて避難訓練イベント。gdgdでしたが、まあイベントと割り切れば悪くはなかったかな。何より副産物としてメインが華やいだことですし。
次は花鳥風月所属の瓦井寿也選手vsFREEDOMS所属の吹本賢児選手。吹本選手は初めて見るプロレスラーでしたが、見るからに首を絞めるのに使いそうな長い帯が印象的でした。やっぱり使ったし! 瓦井選手はパイプ椅子攻撃をくらいながらも善戦しましたが、ボム系の技で万事休す。惜しかった。瓦井選手、ここ最近よく見るスピアー、マフラーホールド、スリーアミーゴスと、試合の流れの中で繰り出せる技を段々とモノにしていってるようですが、まだちょっと、引き出しの数が少ないかな。例えば絶好のお手本である政宗選手は、必ずしも得意技を毎回出すわけではありません。話題になって以降、見られればいいなと思っている「蜻蛉切り」にしても、おそらく変形状態で出したものを一回、目にしただけです。それでも満足させるだけの引き出しが、政宗選手にはある。凄いことです。
むやみやたらに技を増やせば一つ一つの技が散漫になり、かといっていつも同じ技を出していれば、ルーチンじみて色を失う。だからプロレスは難しい。メインはそういったことを改めて感じさせてくれるものとなりました。勝村周一朗選手&服部健太選手vsジ・ウインガー選手&新井健一郎選手のタッグマッチ。何とも贅沢なカードです。
ウインガー選手の硬軟自在のスタイルと客いじりの上手さ、新井選手のマイクアジテーションを含めたプロレスラーとしての懐の深さは、わずかな回数しか見ていない私でも目を奪われ、魅せられてしまったほどの輝きがあります。とにかくこの両選手の突出したスキルの高さは、どのような状況であろうと試合を確実に成立させてしまうのだろうなーという安心感があり、勝村選手と服部選手のダブルエース組も、ベビーフェイスとして自由にファイトしていました。加えて今回、避難訓練イベントの絡みで子供の観戦者が多数陣取っており、その初々しい反応に新井選手はすっかり気を良くして、ノリノリにヒールを演じていたようにも見えました。
格闘技はどこまでも結果がすべてで、どこまでいっても「自分」しかありません。一方でプロレスは勿論「自分」も大切ですが、「相手」、「観客」、果ては「空気」までをも味方にして、糧にして、つくり上げていくものです。試合は勝村選手の決め技、飛びつき腕十字がウインガー選手をタップに追い込みましたが、気を良くしたままの新井選手は、いつもならマイクを取って服部選手をいじりにかかるところで、なぜか江利川選手にツンデレなエールを送っていました。ヒールでありながら、この日の新井選手は、いつの間にか「情」を携えていたのです。果たしてそれは、どのような心境が作用したものなのか。二人の経てきた年月を考えると、ちょっと心が暖かくなりました。
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